大和屋 巌 遺作展

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絵:朝の漁港
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題名
朝の漁港
大きさ
60号
1995

第83回日本水彩展出品
いすみ市市民ギャラリー所蔵

「朝の漁港」
画家によると、銚子の朝の漁港に取材したものだそうだ。数えると、四十人近い人間を組み合わせている。
 手前の緑色のポリバケツに様々な魚が入れられている。それに向かって右のほうにホースで水をかけている人間がいる。
 左から右に流れるリズムが大きく逆カーヴを描いて、左の中景の人物に向かっていく。そういった全体の動きの組み合わせというものをずいぶん考えて、この人物たちを構成している。やや左上の画面の中景に、ボックスが三つあって、そこにかがみこんでいる三人の人物、このあたりがこの作品のへその緒のような焦点であるように思う。それに向かって収斂していくムーヴマンは緊張感があって実に美しい。
 そして、右向こうの遠景の人物、船が、淡い調子だが遠景をガッチリと構成している。
 しかし、船とか人物とか手前の魚とか、均一に描きすぎたために、画家の意図がもうひとつ伝わらないうらみがある。
 いずれにしても、中景のハーフトーンの人物群像がこの作品のポイントだろう。また、中景の岸壁の地面の黄色みを帯びたトーンと、空の水色のなかにすこしピンクがかったトーンとが対照されて、全体で上品な清潔な画面になっている。(高山 淳)
『1996年版 現代日本の美術』(生活の友社)