第84回日本水彩展出品
小樽市立美術館所蔵
「うでのポーズ」
この作品を描くために大和屋さんは国立民族学博物館に通ったそうだ。
たしかに腕をポイントとして昔のアフリカやインカの時代の彫刻を見ると、興味深い。画面の真ん中に大きく腕を広げたアフリカのザンビアの人形がある。この作品は、水平に腕を広げて、垂直に胴体を置いて、まるで十字架のような形をしている。
このフォルムは画面の左下の黒人彫刻の形にリフレインする。
そして、画面の前面に、実際のモデルに腕を張ったポーズをとらせて、現実の女性として昔の作品と対照させて、面白い効果を上げている。
背景はブルーであるが、そこにうっすらと様々な古代の仮面が描きこまれているのも興味深い。腕だけではなくて、腕から手の先にわたる形は、手があるから人間であると昔の哲人が言ったように、その存在が、人間の最も本質的な一つの表情として描かれている。
目より手の表情のほうが面白くて印象深いことはたくさんあるだろう。
そういうところにポイントを置いて、腕というより、腕から手にわたる表情の豊かな人形を集めて、まるで人間の歴史を思わせるような不思議な雰囲気をつくり出している。(高山 淳)
『1997年版 現代日本の美術』(生活の友社)