「立て膝」
中近東あたりと思われる衣装を着けた女性が立て膝をして座っているが、ロングドレスなので、左の靴先がわずかに衣装から見えているだけである。ドレスがこの女性の体を彫刻的な量感のあるフォルムにまとめている。青い地に赤い縫い取りがつけられている。この女性はその赤と同じようなスカーフを顔に巻いている。
肌の白い目鼻立ちのしっかりとしたモデルが、このような衣装とポーズをすることによって強いイメージが生まれる。画家のつくりだした構成も重要な要素だが、中東の青い空とオアシスに咲く美しい花々が浮かんでくる。壁と、女性の座っているボックスの、ベージュの色彩も中東の大地を思わせるものがある。
長い人生を経てきた画家は、人生の価値をシンプルにする。空と大地と人の命、そこに最低限の装飾、たとえば花、そんなイメージをここに描いた。
この作品は、人を深く癒す性質があるだろう。(高山 淳)
『2008年版 現代日本の美術』(生活の友社)