「ケニヤのシャミスさん」
沢山の肖像画があるが、このように人間の美しさを描いた作品は少ないと思う。このケニヤの女性は、おそらく十五、六歳ではあるまいか。この女性の発散する美しさは、今の日本には極めて稀だと思う。敬虔なこの佇まいは、信仰心があるところからきているに違いない。それに加えて、処女性の持つ魅力もある。
名前はシャミスということが題名から分かる。シャミスさんの肖像を通して、信仰と大地に根ざした女性の、人を引きつけずにはおかない魅力が描かれている。背後のケニヤの呪文的な形や、男女の姿をグレーの中に描き、黒と朱と黄色の衣装が鮮やかである。衣装から覗く女性の顔と手が、じつに豊かな表情を作り出している。(高山 淳)
『2004年版 現代日本の美術』(生活の友社)
【作者のことば】
民族には、それぞれ特有の美しさを宿しているものです。
いつか黒人を描きたいと思っていましたら、知人の奥様で、
モデルになって下さる方が見つかりました。民族衣装にも
異国情緒があって、願いを果たすことができました。
水彩画コレクション ポーズする女性と人物像
2001年 グラフィック社 より引用