大和屋 巌 遺作展

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絵:チューリッヒ風景
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題名
チューリッヒ風景
大きさ
60号
1987年

第75回日本水彩展出品

「チューリッヒ風景」
繊細にして大胆な構成
 この題名は「チューリッヒ風景」とあるから、スイスの高原にある都市をテーマにしたものだろう。この作品でまず興味深いことは、さわやかな澄んだ空気が画面の中に感じられることである。こういった微妙な空気はなかなか写真では表現できない。
 前面に赤いレンガの建物が見える。建物の上には尖塔が立っている。窓には緑色のブラインドがみえる。桟は純白に塗られている。その背後に見える建物の群も、白い壁あるいは白い窓と茶色のコントラストとが、清潔である。
 この街並をとり囲むように樹木が描かれている。若緑色から濃いビリジャン系の緑まで、微妙な諧調をみせてこの建物を囲んでいる。
 画面右上方に青く霞む山なみ、その上方に広がる空がわずかにのぞく。
 この空に向かって、画面全体が大きな動勢を作り出している。つまり画面右下から左斜めに向かって、冒頭に示した建物が立体感を持って捉えられて、そして柱形の建物群に向かって、ほとんどジグザグ状に動勢が作りあげられている。繊細にして大胆な構成である。(高山 淳)
「美術の窓」(生活の友社)/1887年8・9月号 №58