大和屋 巌 遺作展

ギャラリー > 日本水彩展出品 > 遺作展 > 街角

前の絵
絵:街角
次の絵
題名
街角
大きさ
60号
1998年

第86回日本水彩展出品

「街角」
若い女性の群像である。自然に弧を描くように配してさりげないコンポジションであるが、その中に生き生きと女性の美しさとか生命感を描き上げている。背後に三枚のジョーカーのカードがあって、その絵柄はファッショナブルな女性になっている。もともとトランプのジョーカーはタロットカードのフールから発展したもので、ゼロと無限、つまりあらゆる可能性を含んだオールマイティの意味合いとしてジョーカーができたわけだ。この作品の場合にもあらゆるものを含んだ可能性という意味でジョーカーが使われてある。こういうところにも大和屋の知恵というか、教養、単に絵を描くだけではなくて意味というものもあわせて作画していくという姿勢が感じられて興味深い。そのジョーカーの照り返しの中に支えられるようにこの群像がさりげなく配されていて、それ自体は広場が、あるいは道路、路上の一隅のように描かれているところもさすがである。(高山 淳)
「美術の窓」(生活の友社)/1998年8月号