大和屋 巌 遺作展

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絵:パピオン
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題名
パピオン
大きさ
60号
1992年

第80回日本水彩展出品

「パピオン」
大和屋巌は対象にくい込むように凝視する人である。今までの風景作品から一転して、今回の「パピオン」は人物にモチーフが変わった。タイ風な衣装をまとったセミヌードの女性が椅子に腰かけている。手前にアフリカ彫刻がいくつか並べられ、バックの壁にもエスニックな仮面が掛けられている。そういったものを克明に描くことによって力強い画面ができ上がる。確かにディテールはしっかり描いてあるが、いわゆる細密画ではない。今回、線が随分使われているが、線描はごまかしを許さない。つまり曖昧なごまかしを避けて、対象を凝視するところからくる強い線の効果は、説明的な細密描写とは異なるだろう。色彩も味わい深い。この強い描線の上から丁寧に薄く塗られた色彩の重ねは品格のある調子をつくりだしている。また物と物との位置関係がしっかりしているために、空気まで感じさせるような室内空間ができ上がってそこに線が、前述のことに加えて装飾的な効果も上げているのが興味深い。(高山 淳)
『1993年版 現代日本の美術』(生活の友社)