第94回日本水彩展出品
三笠市所蔵 (遺作展終了後寄贈)
「ふるさとの山河」
札幌からすこし北に行ったところに大和屋のふるさとがある。その光景を描いたものである。川が画面の中ほどをカーヴを描きながら、やがて右に向かって流れていく。そこに鉄橋が架かり、道はこの橋をとおり山裾を縫って、中景で消えている。上方には雪を抱いた小高い峰が見える。近景では紅葉した景色が現れている。空は淡い黄色で、すこし錆びた黄金色に見える。それと対比されて遠景の雪のグレーが銀を置いたように感じられる。
水彩画でありながら、どこか日本の大和絵の伝統を思わせるところがある。上品で輝くような豊かな色彩がこの作品の魅力である。そして、金の照り返しのように黄金色の光が画面に満ちている。近景の赤く紅葉したカエデのような赤い色彩や、その左側の山吹色に茶色を混色したような色彩なども、実にしっとりとした調子である。ここにあるのは理想の風景と言えるだろう。(高山 淳)
『2007年版 現代日本の美術』(生活の友社)