第76回日本水彩展出品
三笠市公民館所蔵
義兄、故浅田和夫が信州大学でカラマツを研究していた
早春のカラマツを意識的に書き込んでる
「早春八ヶ岳」
爽やかな風景
水絵という言葉から思いうかべるのは爽やかという印象です。大和屋巌さんの「早春八ヶ岳」が、まさに、そうした感じの水彩画ではありませんか。
八ヶ岳山麓の早春は、里では早くも桜が咲いていることでしょう。この季節は残雪がもっとも美しいところで、なんともいえない歯切れのよい山容を見せてくれます。大和屋さんが強くひかれるのも無理はありません。
山麓の丘では、落葉樹が、まだ芽をつけておりません。地面から、若い芽が、ぽつぽつと散らつくころです。茶褐色の樹林と対照的に山の青みが生き生きとしてきます。そこにこの作品のお膳立があるといえましょう。
この作品も風景画としては、セオリーどおりの形式を持っています。ですから安心してみられます。前景の樹林をこまかく写生した苦労は中景の原野をぼかすことによって報われ、遠景をひきたたせております。
自然が、こわされていく昨今、こうした風景画は、あらためて日本の四季の美しさをよみがえらせてくれます。まことに、爽やかな風景でした。(安井収蔵)「美術の窓」(生活の友社)/1988年9月号 No.70